大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和54年(オ)1376号 判決

上告人・附帯被上告人

宇都重光

右訴訟代理人

竹澤喜代治

被上告人・附帯上告人

谷口勇

主文

本件上告及び附帯上告を棄却する。

上告費用は上告人の、附帯上告費用は被上告人のそれぞれ負担とする。

理由

上告代理人竹澤喜代治の上告理由第一点について

所論の別件訴訟は、本件訴訟とは訴訟物及び当事者を異にしているから、所論の既判力抵触の問題を生ずる余地はない。論旨は、採用することができない。

同第二点及び第三点について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立つて原判決を論難するものであつて、いずれも採用することができない。

附帯上告人の上告理由について

約束手形の支払呈示期間内に適法な呈示がなかつたときは、その後に呈示されても、振出人は手形法七八条一項、二八条二項、四八条一項二号及び四九条二号所定の利息の支払義務を負わないと解するのが相当である。附帯上告人の利息の請求を棄却した原判決は、これと同趣旨に出たものであつて、正当として是認することができる。また、附帯上告人は、本訴において本件手形債務につきその不履行による遅延損害金の請求をしていないから、原審がこれを認めなかつたことに違法はない。論旨は、いずれも採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(中村治朗 団藤重光 藤崎萬里 本山亨)

上告代理人竹澤喜代治の上告理由〈省略〉

附帯上告人の上告理由

一、附帯上告人は控訴判決中その敗訴部分に付き、上告を提起し、これが現在御庁に於いて繋属審理中であるので、被上告人は同上告に附帯して上告を提起し得るものである。

二、控訴判決摘示事実は援用する。

三、控訴判決摘示第二項第(五)5に於いて本件手形の振出日が白地のまま呈示したから適法なる呈示と言えないと判示し、附帯上告人が附帯被上告人に対し、遡及権の行使として、本件手形金に対する支払いの日以后の法定利息の償還を求めることが出来ないとなつている。

四、しかしながら、本件の手形振出人に対しては、手形法上の債務を負担する前提に立つてその支払いを命じているから、手形の商法上の利息は負担すべきである。

五、仮に控訴審の判示の通りであつても、本件手形金の請求事件が起訴され昭和四九年一二月一九目に附帯被上告人に訴状が送達されているから、同日以降は手形法上の債務を負うものと思料する。依つて、民法第四一二条三項及び手形法上に照らして違法がある。

六、又、仮に右法律的主張が相入れないとしても、附帯被上告人は訴状の送達の日から本件手形金の債務を負担することになるから、訴状送達翌日(昭和四九年一二月二〇日)から完済まで年五分の割合による法定利息を支払う義務がある。

七、依つて控訴審は法律違反があるから附帯上告に及んだ次第である。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例